理事長挨拶


急性期医療を中心とした
地域包括ケアの実現に向け幅広い患者さんを受け入れる

今後高齢化が進行する中で、国が進める地域全体で住民の健康を診る地域包括ケアは急務な課題となります。それは東京都においても例外ではありません。私たちは、この地域包括ケアを実現するための病院として役割を担っていきたいと考えています。そのため、地域救急医療センターとなる病院、回復期リハビリテーション病院、地域包括ケア病床を有する病院、慢性期病床を有する病院を運営し、その特性に合わせて高度急性期の患者さんから回復期、そして慢性期に至る方々まで幅広く受け入れています。さらに、患者さんを地域の生活する場にお返しするために在宅診療所や訪問看護ステーションも運営し、退院後の在宅医療においても重要な役割を果たしています。
代表ご挨拶

優秀な専門医が揃っている−高齢化とともに総合診療医の力が必要になる

私たちの病院には、非常に優秀な専門医が揃っています。そのため、患者さんは安心して治療を受けることができるのではないでしょうか。私は医師には、専門医としての能力に加え、今後はさらに総合診療医としての能力を持ってほしいと考えています。例えば、これからの医師には、専門が整形外科であっても風邪の症状を的確に診断できるような力が必要になるのではないでしょうか。それは、高齢者は複合的な疾患を抱えることが多く、専門分野外の診療が必要になるからです。つまり、専門家であると同時に総合的に患者さんを診ることができるプライマリ・ケアに対応できることが重要になっていきます。このため、私たちの病院では、総合診療医を病院全体で育てていきたいと考えています。

高齢者の増加とともに介護との連携も重要となる

今後、全国的に高齢者は増加していきますが、東京では同時に核家族化が進行しています。核家族化は、老々介護や独居の高齢者の増加につながる重要な課題です。地域包括ケアにおいて医療は重要ですが、これらの課題は医療だけでは解決できません。介護との連携など、医療を超えた事業を作りだすことが重要になります。高齢化が深刻化する2025年には、東京都で在宅医療が必要な患者さんは1日につき約14万人になり、今より5万人増えると言われています。在宅医療の実現のためには、医療と介護の連携など多職種の連携は避けては通れないでしょう。

東京都では医療連携が重要となる−ネットワーク化の実現に向けて

東京都は全都的に広く患者さんが移動すると言われています。それは、がんのように急がずにじっくりと専門医を選んで受診するような病気や治療に緊急を要さない慢性期の患者さんは、必ずしも地元の病院を選ぶとは限らないからです。また、治療に緊急を要する患者さんであっても自宅と離れた地域に搬送される場合もあります。そのため、東京都においては、地元のみならず全域に渡る医療連携が重要になるでしょう。

電子カルテのネットワーク化

医療連携の1つの例として、私は主要な病院の電子カルテをお互いに確認することができるシステムが必要であると考えています。それは、東京の医療連携をスムーズにおこなうためには情報を共有する必要があるからです。東京都医師会、東京都病院協会では電子カルテのネットワーク化を実現するために東京都総合医療ネットワーク事業を開始しています。病院を移動したり退院した後も適切な治療をスムーズにおこなうことが可能となるように、私達は積極的に参加してまいります。

地元の病院へお返しするための病院救急車

また、高齢になり寝たきりになると移動は困難になります。実は、東京には東京消防庁のほかに、病院が約60台以上の救急車を保有していると言われています。これらは通常は利用されることが少なく、有効活用できる貴重な医療資源であると私は思っています。例えば、これらの病院救急車を高齢者の搬送に使用し、地元の病院にお返しするために利用することができれば、地域包括ケアのための一助を担うと考えられます。現在私たちは4台の病院救急車を保有し、自病院に限らず、地域の病院・診療所の要請を受けて患者さんの搬送に活用しています。高齢の方々をこれまで暮らしていた地域全体で診る体制を作っていきたいと考えています。

地域包括ケアの実現に向けて−生活者を支える病院へ

お話してきたように、今後高齢化が進行する中で、地域で患者さんを診る地域包括ケアを支える医療が重要になります。地域包括ケアとは、生活者を中心に置いた医療介護サービスです。その領域は、疾患の治療のみならずヘルスケア全般に及び、生活者を支えるということを意味します。生活者の視点に立ち、生活を支える医療でありたいというのが私たちの願いです。そのために、私たちは患者さんを選ぶことはありません。どなたにも来ていただきたいと思っていますし、どんな患者さんにも対応できる病院を目指していきます。

新型コロナウイルス感染症への対応

私たちは必要とされる医療を提供することが使命と考えています。新型コロナウイルス感染症に対する医療は、絶対的に必要とされるものであり、平成立石病院、南町田病院、花と森の東京病院で入院医療を提供し、荒木記念東京リバーサイド病院や葛飾リハビリテーション病院ではポストコロナの患者さんを受け入れました。発熱外来、PCR検査などの検査、ワクチン接種は全病院で行いました。その他臨時医療施設の運営なども行い、おそらく日本一新型コロナウイルス感染症の診療を行った民間グループではないかと自負しております。要するに高齢化に対応した医療であっても、感染症に対応する医療であっても、住民の方に必要とされる医療を提供することが私達の使命です。私達でなくてはできないことを考え私達なりの進化をし続け、ニーズに応え続けていきたいと考えております。 
理事長 猪口 正孝